「好きなことを仕事にする」ために|私は本当はどうしたい?

「好きなことを仕事にする」ために|私は本当はどうしたい?

テレビには、ずっと見たかった映画が流れている。仕事で疲れた身体を、どっぷりソファに沈ませる。

「好きなことを仕事にできたら」ふと、思う。

好きな映画を観たり、レコードを聴いたり、本を読んだり。そんな時間を守るために、私は働いている。新しい「好きなこと」に出会うために、お金を稼いでいる。

それでも、満たされない。1日の3分の1を、やりたいとも思えない仕事に捧げるのは、これからも続くのだろうか。好きなことを仕事にしたら、どうなるだろう。好きじゃなくなるかもしれない。才能がないと気づくかもしれない。

そんなことを考えているうちに、眠ってしまった。映画はまだ、始まったばかりだった。

「好き」より「嫌い」で仕事を選んだ

就職活動が嫌いだった。同じ黒のスーツに身を包み、自分を売り込む大学生。利益追求を重視する企業。どちらにも違和感を覚えていた。

だから、「これは嫌だ」という基準で企業を絞り込んだ。そして、特に嫌悪感を抱かなかった企業に就職。入社後は店舗勤務となり、やりたいことはなかったものの、生活のために働いていた。

周りに合わせて昇進を意識しはじめると、成果を出すことにのめり込んでいった。いつしか残業もいとわず、がむしゃらに働くように。

好きな映画の途中で寝落ちする日々。これが社会人か、とゆっくり諦めていった。

しかし、過労で体調を崩し、休職。仕事から離れ、「自分はどんな人生を送りたいのか」考える時間ができた。そして、「好きなことをして、自分の人生を生きたい」と思うようになった。

そこから、物事を選ぶ基準が変わった。迷ったときは「私は本当はどうしたい?」と自分に問いかけるのだ。

私は本当はどうしたいのか。

悩んだ末、成果を追い求める働き方から離れて自分の人生を生きるために、退職を決意した。どうせ働かなければならないのなら、好きなことを仕事にしたい。そう思うようになった。

「好きなことを仕事にする」のは怖い

「自分の人生を生きる」と決めて退職。これからは、好きなことを仕事にして生きたい。

映画や本、音楽、ドラマ。好きなことはいくつかある。でも、それらをどう仕事にするか考えた途端、目の前はぼんやりと暗くなっていった。

最初は、好きなことからパッと連想できる仕事を考えた。映画なら監督や脚本家、本なら作家や編集者など、好きなことを「作る」仕事。けれど、どの仕事にも「これがやりたい」と確信を持てなかった。

それに、好きなことを仕事にするのは怖い。仕事になれば、好きなことも数字や評価の対象になる。クライアントに合わせるうちに、好きなことを嫌いになってしまうかも。

ぐるぐると、迷宮入り。そうだ、迷ったときは「私は本当はどうしたい?」を考えればいいのだった。私は本当はどうしたいのか。

真剣に自分と向き合ううちに、はっと気づいた。私は、好きなことを「作る」仕事がしたいわけではないのかもしれない。好きなことを楽しんでいるときの自分でいたい。

好きなことから感じる、あのドキドキやワクワクを、生活の中心である仕事でも楽しみたい。それなら、私は好きなことを、どう楽しんでいるのだろう?

同じ作品が好きな友人と話していても、見ているところや感想の角度が違うことがある。もしかしたら、好きなことの楽しみ方には、その人らしさがあるのではないか。

そこから、少しずつ自分の「好き」を掘り下げていった。「映画が好き」だけでは説明できない、自分なりの「好き」の形を。

「好き」を掘り下げたら「仕事」とつながった

私は、好きなことをどう楽しんでいるのか。

好きなことを楽しむとき、私はまず、どこが自分の心に残ったのかを考える。なぜ心に残ったのか、疑問や興味が湧いたことを調べ、作品の背景やテーマを知る。そこで得た知識から、別の作品や知らなかった世界への扉が開き、さらに興味が湧いてくる。

最近も、パートナーと映画『オデュッセイア』を観たあと、そのような時間を過ごした。

パートナーは映画を観終わると「面白かったね」と一言、そのまま次の用事へ。一方の私は、帰宅してからも作品のことで頭がいっぱいだった。

気になったことを調べているうちに、ギリシア神話の扉が開いた。そして、神話の物語が、現代のさまざまな作品のモチーフになっているという新たな発見をした。

バラバラだった点がつながって、「これって、こういうことだったんだ!」と新しい世界が開けていく。その瞬間が、たまらない。

新しい発見をした後は、誰かに伝えたくなる。後日、パートナーに話すと、「そういうことだったんだ」と驚いてくれた。その反応も、たまらない。

「好きなことを深く知り、そこから新しい発見をして、見つけた面白さを誰かに伝えること」

それが、私なりの「好き」の形。

ふと、思いつく。

私は、好きなことに向き合うときだけ、こんなふうに考えていたのだろうか。

ここで、以前の仕事を振り返ってみた。

店舗で売れ筋の商品が突然売れなくなったとき、私は売上の数字や状況を確認し、考えられる原因をいくつも挙げていた。それらを分かりやすく整理し、上司に報告することが得意だったのだ。

「なぜだろう?」と疑問や好奇心を持ち、情報を集める。点と点をつなげる。そして、分かったことを整理して相手に伝える。

振り返ってみると、好きなことに向き合うときも、仕事をするときも、同じようなことをしている私。

やっと、「好き」と「仕事」を結ぶヒントが見つかった。

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いつか、「好き」が誰かに届く日まで

「好きなことを仕事にする」と決めたものの、今の私はまだ、そのゴールにたどり着いたわけではない。現在はライターの仕事に少しずつ挑戦しながら、noteで好きなエンタメについて発信している。

以前は、「好きなことを仕事にする」とは、好きなことを作る側になることだと思っていた。

でも今は、

「好きなことの何に惹かれ、どう楽しむのか」
「好きなことへの向き合い方と、働き方に共通点はないか」

そこまで「好き」を掘り下げることで、仕事につながる道が見えてくると分かった。好きなことを仕事にしたいけれど、どうしたらいいか分からない。そんなときは、まず自分の「好き」を問い直してみてほしい。

仕事を終え、私はソファで映画を再生する。いつか、この作品の面白さを自分の言葉で誰かに届けられるかもしれない。そんな未来を想像してワクワクしながら、今日もエンドロールまで見届ける。

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本記事はSHElikesの受講生を対象とした「SHEライターコンペ」の採用作品です。(執筆者 成瀬はんなさん)

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