イエスマンだった彼女が走るオフロード。営業職から仕事もプライベートも楽しむマーケターへ

「昔から『人の心を動かしたい』って気持ちはあったんですけど、それがマーケターなのかは確信が持てなかったんです」

そう振り返る彼女は、光を集めるような大きな瞳が特徴的だった。

人気コラムニスト ジェラシーくるみさんによる

SHElikes受講生インタビュー

杏珠さんの顔写真

マーケター 杏珠さん

キャリアへの漠然とした不安からSHElikesに入会し、勉強や人間関係を通して自身の根っこと向き合い続けた。その後、マーケター職への転職で年収は倍に。今は仕事もプライベートものびのび楽しみながら日々を過ごしている。

ジェラシーくるみさんのイラストアイコン

しがないOLコラムニスト ジェラシーくるみ

会社員として働きながらコラムニストとしても活躍。リアルな恋愛観やアラサー世代の悩みを描き、多くの共感を集める。著書に『そろそろいい歳というけれど』『私たちのままならない幸せ』(主婦の友社)など。

開いた本のイラストアイコン

Story

学生時代のイベントの成功を機にマーケティングに興味を持った杏珠さん。

新卒で社員50名の人材派遣会社に入社し、インサイドセールスの立ち上げに携わることになったものの、来る日も来る日も架電営業を続ける中で、「このままでいいのか」という思いに苛まれていたという。

目的がないまま周りと同じ作業を強いられるのが辛く、やりがいも手応えも感じられない日々。

手帳に書き込まれた手書きのメモとノートPCのキーボード(モノクロ調)

焦燥感や不安を抱え、会社のトイレでひっそり泣くことも何回かあった。

ノートPCのイラストアイコン

CareerChange

社会人二年目になった彼女は、「新型コロナによる働き方への影響調査」というリリースでSHElikesの存在を知り、体験レッスンに足を運んだ。

キャリアスクール、というもののイメージをつかめないまま参加した体験レッスンだったが、そこで一人のキャリアカウンセラーと出会い、初めて自分が抱えていた仕事へのモヤモヤを言葉にすることができたという。

というのも、彼女の周囲にはベンチャー企業で奮闘している仲間や、マーケターを目指している友人はいなかったからだ。

「自分のキャリア観を人に話す初めての出来事でした。自分がどう生きたいか、を見つめ直すきっかけになりましたね」

SHElikesのイベントスペースで壁に手をついてポーズを取る杏珠さんとスタッフ(MAKE GRADATION YOUR LIFEの壁文字)

SHElikes入会後にさまざまなテーマの勉強を重ねていく中で、やはり自分がやりたいことは顧客の心を動かすことだ、と感じた彼女はマーケターに舵を切った。

平日は1〜2時間、土日は3〜4時間を勉強に割き、仕事と勉強を両立させていた杏珠さんだが、一番しんどかったのは、なかなか周りの人に理解されなかったことだという。

入会から半年ほどが経った頃、久しぶりに会った友人に近況報告をして返ってきたのは「なんでそんなに生き急いでるの?(笑)」という言葉。

その一言は、親友と思っていた人との距離を感じさせるものだった。

仕方ない。社会に出て別々の道を歩むようになった友人とは徐々に心の焦点がずれ、見ている景色も目指す山も変わってしまうものだ。

だが、そんなときでもSHElikesで出会った仲間とは勉強の進捗を共有し、刺激し合えていたという。彼女たちは「絶対に笑わないでいてくれる友達」であり、今でもその仲間と定期的に会ってはキャリアの悩みから恋愛、将来の夢まで、何でも話しているそうだ。

SHElikesのラウンジで笑顔で語る杏珠さん(本棚とスタンドライトのある部屋)

「私って、もともとイエスマンで、人に合わせてばっかりの人生だったんです。彼にショートが好きって言われたら、翌日すぐ髪を切りに行くような」

彼女はあっけらかんと打ち明けた。

にわかには信じがたいが、友人からのランチの誘いを断れず、11時からと13時からの2部制でランチをこなすことも珍しくなかったという。

その背景には、母親との密接な二人三脚があるようだ。

唯一自分で選んだミュージカル部を除いて、彼女の習い事や進学先はすべて母の希望で決まったものだったという。

母が望んだ道を、自分の道として着実に歩んでいくのが得意技だった。

「母とは今でも仲が良くて、愛情も尊敬もたくさんありますけどね」と彼女は朗らかに語ってくれた。

その独白を聞いて、私は自分の生育環境の「上流」に遡るしんどさを思い出した。

人の性質や行動というものは、河の流れのように過去から今へと連綿と続いているものだ。

人生の流れを遡っていくと、きまって自身の性質やコンプレックスの根源にぶち当たる。

それを間近で見つめ、手探りで向き合う作業は過去を否定するようで苦しいが、その苦痛や頑張りだって未来の自分を形作るものであり、それはいつかの自分から見た「上流」なのだ。

山と旗のイラストアイコン

Challenge

SHElikes入会から半年が過ぎ、杏珠さんは実践の場を求めて積極的に動き出した。学んだ知識を活かそうと、社内では新たなプロジェクトに率先して手を挙げたという。こうした前向きな姿勢から、元々の架電セールスだけでなく、マーケティングの業務も徐々に任されるようになっていった。

また、ビジネスの場で出会った人たちにも、自分が学んでいることや情熱を惜しみなく伝え続けた。その結果、熱意に共感してくれる人たちから「そんなに頑張っているなら、ぜひうちのマーケティング戦略を手伝ってほしい」と声がかかるようになったそうだ。

ようやく報われた、と感じた瞬間だったという。

手書きのイベント企画メモ「SHEメイトNight」(杏珠さんのイラスト付き)
SHElikesのイベントに登壇。参加者が書いたイベント内容のまとめ

そこから数ヶ月経った頃、彼女はさらにマーケターとして本格的に実績を積むべく、転職活動を開始した。

一年にわたる転職活動の末、志望していたクラウドサービスの企業でマーケター職に転職。

現在は、広告やSNSの運用、コンテンツのディレクション、さらにはイベントの企画や運営まで幅広く手がけているそうだ。

ホログラム風の装飾とノートPCが置かれた会社のデスク
イベント前の会社のデスク

「顧客の意見をすぐにプロダクトへフィードバックすることで、ダイレクトに改善が見えるんです」と彼女は生き生きと語る。

今の会社ではマーケティングチームと開発チームが密接に連携しているため、イベントで得られた顧客の生声が迅速にプロダクトに反映されるらしい。

自分の考案が目に見えて製品の進化に寄与しているという確かな実感。

また、発信したテーマがYahoo!ニュースに取り上げられたり、イベントで顧客と直接話す機会も得られたりして、以前の職場では得られなかった手応えを強く感じているそうだ。

加えて、副業での経験を活かし年収交渉をした結果、勤務時間が減ったにもかかわらず年収が倍増したという。

私が一番目を見張ったのは、杏珠さんの思考の変化だった。

勉強や転職活動だけでなく、その一連の流れの中で経験した人間関係を通して、彼女は意思決定のプロセスや自己認識を大きく進化させた。

「勉強でも部活でも仕事でも、何かしら動いて努力していないと不安でしょうがなかったんです。

でも、ふと『何も逃げていくものはないな』と気づきました」

「なんでそんなに頑張ってるの?」「意識高すぎ(笑)」と笑う学生時代の友人との温度差を感じながらも、自ら踏み込んだコミュニティで信頼できるコーチや仲間に出会い、コンプレックスや性質と徹底的に向き合い続けた杏珠さん。

折り紙や水彩紙を使って手仕事をする杏珠さん(正座、眼鏡)

私たちが自身の経験の「上流」に遡っていくとき、そこに現れるのは単純な原因ではなく、さまざまな要因が絡まり合っている複雑な構造だ。仕方のないことや自分で起こした出来事、または単なる偶然などが折り重なり、絡み合って巨大な黒い塊を作り上げている。

その塊が私たちの心の奥底に根を張り、一つひとつの行動や選択に影響を与えているのだ。

彼女は、絡まり合った根っこを素手で掘り起こし、自身の輪郭をつかんだのだろう。

そしてようやく、自分の中にいる架空の「誰か」の評価や期待から自由になることができたのだ。

「頑張る自分」から降りてもいい。周りと比べなくてもいい。

そのときの自分が納得できればそれでいい。

沖縄の海を背景にベンチの前に座る杏珠さん(帽子・サングラス)
ペンのイラストアイコン

Afterword

最近、彼女は長期休暇を取り、ニューヨークでミュージカル漬けの旅行を満喫したという。その中で得た顧客としての興奮やインスピレーションを、今度は自身の仕事に活かしている。すべての体験が彼女の仕事に新たな視点をもたらし、創造的なアイデアを生み出す土壌となっているのだ。

ニューヨーク旅行の手書き日記、&Julietミュージカル前のセルフィー、SIXの観劇後に共演者と写るブロードウェイ街頭の写真の3枚グリッド

土日はあえて予定を詰め込まず、陶芸、ヨガ、ドラマ鑑賞など心の赴くままに過ごすようになったらしい。20代のうちにやりたいことが沢山あるけれど、今の仕事が楽しすぎてまだ考えられない、と晴れ晴れしい顔で語る彼女。

その様子があまりに爽やかで、思わずドキッとしてしまった。

誰かが敷いたレールではなく、自分だけのオフロードを楽しみながら走る彼女が眩しかった。

ブルックリン橋の上でピースサインをする杏珠さんのセルフィー(毛皮風帽子・マフラー、NYの摩天楼を背景)

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( STAFF )
ライター/ジェラシーくるみ
編集/橋本 恵梨奈
デザイン/網倉 千穂
実装/阿部 美穂

ABOUT ME
デザイナー chiho
キャリア迷子から脱却するためにSHElikesへ入会。副業を経て、現在はフリーランスWebデザイナー&動画編集者として活動中。
エディター 橋本 恵梨奈
コンテンツディレクター | SHElikes卒のフリーランス | ヘアケアブランドを展開するD2C企業での勤務を経て、ライターとして独立 | 「誰もが自分を満たせる世の中」を目指して活動している

※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。